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幻想文学に思いを馳せて

更新日:2021年12月23日

 こんにちは、修士1年の河野です。一応院生ですがこの記事を執筆している方の中では恐らくきっと多分私が一番後輩だと思います。

 さて、記事を執筆するにあたりクリスマスに関連した話題にしようと考えていたのですが、サンタさんが来なかった私にはこれといった思い出が存在せず大した知識が無いため、軽いクリスマスの話題から無理やり私の得意分野に話を繋げようと思います。


キャロル

 突然ですが、みなさんはキャロルについてご存知でしょうか。キャロルとはクリスマスイヴに歌われる聖歌のことを指します。言うなればキリストのバースデーソングです。「きよしこの夜」や「荒野の果てに」等は有名ですね。ちなみに私はホームアローンでキャロルの意味を知りました。今年の12月24日に金曜ロードショーで放映されるらしいですね。新作のホーム・スイート・ホーム・アローンも面白かったです。


 ですが、私はキャロルといえば2冊のイギリス文学を思い浮かべます。「クリスマス・キャロル」とルイス・キャロル著書の「不思議の国のアリス」です。

 私は紅茶好きが高じてイギリスに興味を持ち、その流れでイギリス文学にも興味を持ちました。2冊とも多数の作家による翻訳や映像化がなされているためご覧になった方も多いのではないでしょうか。

 今回は貴重な執筆の機会を頂いたためクリスマスに因んでクリスマス・キャロルのお話を・・・ではなく、果せる哉クリスマスよりもお茶が好きなため、お茶会の描写が名高い不思議の国のアリスについて好きなところを気の赴くままに綴らせて頂こうと思います。(ちなみに178年前の今日、12月19日はクリスマス・キャロルが出版された日です。)


不思議の国のアリス

 不思議の国のアリスはビクトリア朝時代のイギリス文学の中で最も有名な作品のひとつであり、その構想ができたのは1862年のことです。キャロル(本名 チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン)は親しくしていたリデル家と共にピクニックに度々出かけていました。そこで即興で物語を作って聞かせていたのが不思議の国のアリスの始まりです。


▲キャロルとリデル家の子どもたち(1862)


 キャロルがいつものように物語を聞かせていると三姉妹のうちの一人、そして物語の主人公のモデルであるアリス・リデルがキャロルの作った物語を気に入り、本にして欲しいと望んだためキャロルは今までの物語をまとめて閉じた本をアリスに渡しました。この本がアリスには評判がよかったため、気をよくしたキャロルは加筆修正を行い1866年に本を出版します。これが爆発的な売れ行きを見せたことでキャロルは続編の構想を練り、1871年に「鏡の国のアリス」を出版しました。(歴史に関しては諸説あります。)


 不思議の国のアリスが初めて映像作品となったのはキャロルの死から五年後の1903年であり、これは今でもYouTubeで見ることができます。8分程しかなくモノクロサイレントで作られている映像ですが、この後ディズニーを代表とした様々な制作会社が参入し現在では世界中で映像作品が作られています。是非お時間があればご覧ください。


▲最初の映像作品


気遣いのお茶会

 さて、不思議の国のアリスといえば、通称「気遣いのお茶会」ですね。簡単にこのシーンのストーリーを説明します。

 眠りネズミ、いかれ帽子屋、三月ウサギの三匹が大きなテーブルの隅でお茶会を開いていました。主人公のアリスはそのお茶会に入ろうとして断られます。アリスが無理やり座ると眠りネズミがティーポットを差し出し「ワインをどうぞ」と勧めます。いかれ帽子屋が答えの無いなぞなぞを出すと時間の止まった時計を見つめ、きらきらコウモリの歌をうたうとハートの女王に死刑を宣告されたことを打ち明けます。いかれ帽子屋と三月ウサギが眠りネズミをティーポットに押し込めようとしているのをみて、アリスは席を立ち木の戸口へ向かうのでした。


▲気遣いのお茶会(A Mad Tea-Party)


・・・意味わかりませんね。私も意味を分かっていません。だいぶ端折ったのですが、要約しなくても理解できません。ちなみに、不思議の国のアリスはリメイクや翻訳が繰り返されている作品のため内容に多少のゆらぎがあることをご了承ください。ディズニーのアニメ映画は比較的理解できました。

 さて、この物語を考察しようと今までインターネット黎明期から今まで様々な議論が行われてきましたが、私自身の見解としては特に意味のあるストーリーではないと考えています。理由としては、元々キャロルが即興で作った話だということ、もう一つの理由はアリスの夢の中という明確な設定があるからです。もちろん、少女の健気さや痛々しさを描画する意味では欠くことのできない大切な場面ではありますし、全ての物語は虚構ではなく一人ひとり軌跡や想いを綴った結果であると個人的に考えているため、あらゆる文書において考察を否定する意図はありません。


不思議の国の、不思議な魅力

 このつかみどころのないストーリーですが、私は不思議な魅力を感じています。この魅力を否応なしに言葉で表すと「愛らしさと不気味さ、無邪気と狂気の対比」でしょうか。少女向けに作られた物語にもかかわらず残酷な描写があり、夢幻と錯覚が支配する異界の住人は幼稚園児のような我侭さからなるサイケデリックとも形容し難い行動を繰り返します。それが余人の目にどう映りどのように感取されるかは軽率に判断ができるものではないと自覚しておりますが、少なくとも私にとっては今までの冒険で培ったアリスの勇壮さや孤独さがこのシーンに微妙な陰翳を与えており、より一層お茶会が狂気的に引き立って描写されるのです。実際この魅力は世界共通らしく、前述したように考察や議論が活発に行われており、現在に至るまで様々な場所でこのお茶会は世界中で愛されています。


 一例として、気遣いのお茶会をモチーフにしたアフタヌーンティーがあることをご存知でしょうか。

 ホテルインターコンチネンタル東京ベイではアリスの世界観を再現したアフタヌーンティーが今年の11月下旬まで開かれていました。


▲ホテルインターコンチネンタル東京ベイ「ハーバービューテラス」

アリス in トリックミステリー ~不思議の国のスイーツティーパーティー~


 このように国内だけでもアリスを追体験できるお茶会は全国のティールームで随分開かれています。私も何度か行ったことがあるのですが、ティースタンドが運び込まれると同時に雰囲気に呑まれ、絵本の少女に思いを馳せつつなんとも魅惑的な誘いの中で紅茶を頂くことができました。

 勿論、アフタヌーンティー以外にもカルディ、amazon等が「不思議の国の紅茶」というティーバックを販売していたり、「アリスファンタジーレストラン」というコンセプトグループレストランや「紅茶の国のアリス」というカフェインレスの専門店があったりします。また、「水曜日のアリス」という雑貨屋等ではお洒落な茶器も発売されています。

 是非皆さんもお好きな方法で俗世間から離れ、可愛さと狂気が混ざり合い幽玄のある不思議の国を体験してみてはいかがでしょうか。


 

 最後に、私の好奇心の赴くまま書き連ねた拙稿ではございますが、果たしてここまで読んでくださった方はいるのでしょうか。当時の時代背景から考察するとまた別の楽しみ方があり、また自身の専攻が生物学のため「不思議の国のアリス症候群」という少し変わった神経の変性についても解説したいところではございますが、紅茶を淹れたくなったためこの辺りにしたいと思います。

 それでは今年も一年お疲れ様でした。今日はコールドムーンですね。12月上旬には金星・木星・土星・ISSを、13,14日はふたご座流星群を観察するため寒気が凜々と身にしむ夜に外出したはずなのですが、また望遠鏡を持ち運ばなければならないようです。ラニーニャ現象により今年は厳冬が予想されています。体調にはお互い気を付けましょう。明後日にはお天気の記事が投稿されるそうなので楽しみにしていますね。


文責:河野

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