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紅茶と人権について

 おはようございます。法学部3年の長谷川です。

 この紅茶同好会KUREHA Advent Calender 2020が始まり、早10日目。本日12月10日は世界人権デーです。1948年12月10日の国連総会で世界人権宣言が採択されたことを受け、毎年12月10日には世界各地で人権についての記念行事が行われることとなっています。


 それにちなみ、この記事でも紅茶を取り巻く人権について考えていきたいと思います。(すでに「なんでこんな小難しいテーマを選んだんだ…」と後悔の気持ちしかありません。)


 嗜好品としての紅茶には「おしゃれ」「優雅」「上品」など華やかなイメージがあります(必ずしも当会には当てはまりません)が、農業生産物として茶を見た場合、そのイメージをそのままに考えることはできません。

 紅茶を巡る歴史を振り返ってみれば、紅茶は国際商業の中心に(時には渦中に)置かれてきました。現在でのほとんどの茶葉大産地を発展させた帝国主義・植民地主義が、グローバリズムに取って代わられた後も、各地の茶農園、紅茶プランテーションは、資本主義(の中のいくつかの醜悪な形態)や民族主義(同前)に曝されてきたと言えます。その中で、他の生産物のプランテーションにおける問題と同様に、先進国による搾取や農園労働者の人権侵害とも言える労働問題が起こってきました。


 茶産地における労働環境や児童労働を巡る問題は、現在においてもなお続いていると言われています。特に、2009年に国内の民族対立から生じた内戦終結宣言が出されたスリランカでは、かつてからタミル人が紅茶プランテーションでの労働力として活用されてきました。スリランカにおけるタミル人は、紀元前にインドから移住したり、スリランカが英国植民地であった時代に、紅茶プランテーションでの労働力として強制移住させられたりして、スリランカに定着した民族で、現在では全人口の18%を占めています(https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol40/index.htmlより)。英国植民地時代に少数派のタミル人は優遇されてきた反動からか、独立後には多数派であるシンハラ人(全人口の74%)を優遇する政策が進められ、タミル人は迫害される立場に追い込まれた結果、内戦に発展しました。内戦が終結した今でも、スリランカの茶農園では、児童労働や教育環境の不整備の影響で、職業や社会階層の固定化が続いていると言われています。(この点につき、今年8月に出版された栗原俊輔さんの『ぼくは6歳、紅茶プランテーションで生まれて。スリランカ・農園労働者の現実から見えてくる不平等』(合同出版)は、スリランカの紅茶農園における労働問題について分かりやすく書かれています。興味のある方はご一読ください。)


 これらの問題について、日本や世界各地の飲料品メーカーや人権団体はさまざまな取り組みを行なっているようです。有名なところで言えば、1997年に設立されたEthical Tea Partnershipや午後の紅茶を販売するキリンのスリランカフレンドシッププロジェクトなどがあります。

 生産・流通の分野において、人権問題や環境問題、フェアトレードが意識されるようになって、短くない時間が経ってきています。ポスト・コロナの時代は、人権や環境などを重視する価値観への転換が起こるのではないかと言われている中で、生産活動だけでなく、消費活動においても人権・環境への配慮が期待されることになっていくのかもしれません。


文責:ハセガワ

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