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考え方についての本とソーシャルスキルについての本を読んだ話

 こんばんは。3年の西村です。好きな茶葉はルフナです。よろしくお願いします。


 今日は紅茶とは関係の無い、私が読んだ本の話をします。書評というよりはノートとちょっとした感想という形ですが、楽しんでもらえると嬉しいです。


 普段はもっぱら理学書を読んでいる私ですが、今回は物理とは直接的には関係のない本を2冊紹介します。1冊目は上田正仁「東大物理学者が教える『考える力』の鍛え方: 想定外の時代を生き抜くためのヒント」(PHP研究所)、2冊目は橋本剛「大学生のためのソーシャルスキル (ライブラリ ソーシャルスキルを身につける) 」(サイエンス社)です。


1冊目 : 上田先生が考えるとは何かについて書いた本


上田正仁「東大物理学者が教える『考える力』の鍛え方: 想定外の時代を生き抜くためのヒント」(PHP研究所)


 1冊目の考える力の本は、私が所属する物理学科の教授の上田さんが書いた本です。上田さんはつよつよな研究者として弊学科でも有名な先生ですが、後進の育成でも有名な方で、沙川さんや芦田さんをはじめとする上田研出身者がバリバリ業績を挙げています。

そんな上田さんがどういう考え方をしている人なのか興味があってこの本を読んでみました。


 この本のメインの主張(だと私が思うもの)は、「考えるプロセスは問題の発見、問題の分解整理、整理した問題の解決の3つに分解できる」というものです。特に一つ目の問題発見の能力を上田さんは重視しているようで、これについて詳しい記述がありました。問題を見つける力が重要というと耳にタコが出来るぐらい聞くフレーズですが、この本では問題発見のプロセスをより詳しく分解していて解説し、その能力を高めるにはどうすれば良いかまで書いてあって、とても実践的な内容に見えます。実際、耳学問とかする時はとても実践しやすくてすぐに役立つ内容が多かったのでためになったなと思います。その点ではとてもオススメです。


 ですが、この本に書いてある事を勉強の文脈で真面目にやろうとすると滅茶苦茶要求が高いです[脚注1]


 例えば、「情報を集めて、資料をよく読んで、理解したらメモは捨てる」という主張があります。メモそのものではなくて、よく整理した重要な情報だけを抽出して覚えておいた方が身になるよねという感じで話を展開されていました。至極まっとうな主張です。日常的な事であればよくある話で、ググって適当な記事の内必要なものだけ覚えておくというのはよくある話です。


 しかしながら、これを学習の場でやろうとすると滅茶苦茶難しくなります。端的に言えばノート見るなという事です[脚注2]。 言い換えれば、ノートを捨ててもいいぐらいによく読んで理解しろという事になって、物理や数学で言えば教科書やノートが無くても自分が構成出来るようになるまで資料を読み込めという事になります。滅茶苦茶厳しいなあ。


 とはいえ確かに言ってることは最もなので、少しでも自分で議論を再構成出来るように頑張ろうと思いました。そうすると自然と手を出せる範囲は限られるので、ここは自分で構成出来るぐらい真面目にやるという部分と、この話はお話として見ておこうというの部分をはっきりとすることが必要になるので、これを意識しておこうと思います。


 ここで本の構成の話を少しします。この本は部分ごとにターゲットしているが明確な本だと思いました。前半のメインパートは読者全員が読むわけですが、要所要所で高校生や学部1年生に向けたメッセージが散りばめられていて、前期教養の学生ぐらいを対象にしているように思われました。

 例えば大学入試までは与えられた課題をこなす「マニュアル力」が求められるけど、学部で求められるのは考え抜く力で、院で研究するなら問題発見能力(だったと思う。うろ覚え。)が評価されて、評価の軸が変わるのに適当するのは大変だよねと言った話がありました。

 一方で後半はおじさん向けと言った感じで年をとっても考える事を続けようという内容だった気がします。私はターゲットの読者ではないなと思って後半はほとんど読んでいないので、後半についてはエアプ並感だと思ってください。


 まとめですが、この本は考える事について上手く言語化された上に能力を鍛える方針も書かれた良書だと思います[脚注3]。 人によってどの部分が響くかはかなりばらつきがあると思いますが、読めば何かしら参考になる本だと思うので是非手に取ってみてほしいです。


 

[脚注1]:これをみるとやっぱり上田研って元々強い人がさらに強くなる場所じゃねって気持ちになります。


[脚注2]:これは確かに言う通りで、初めて勉強した時のノートとか見ると計算の痕跡とかでグチャグチャしていたり頓珍漢な考えも書いてあったりして、思い出のアルバムとしてはいいけど資料としてはイマイチという事がままあります。


[脚注3]:上田先生に特にお世話になっている物理学科の学生たちの間ではバイブルされている?見たいです。4年生の控室の本棚に何冊かおいてあるらしい。

 


2冊目 : 1年の時に読みたかったなと思った本


橋本剛「大学生のためのソーシャルスキル (ライブラリ ソーシャルスキルを身につける) 」(サイエンス社)


 2冊目の橋本さんの本は、ソーシャルスキル(乱暴な言い換えをすると「コミュ力」)について大学生が直面するような場面に応じて丁寧に解説がなされた本です。

 書店でよく見る所謂「会話術」の本にあるようないわゆる「ロジカル」な会話[脚注4]ではなく、ごく普通の日常的な会話の中で必要なスキルについて書いてあります。ここでいうスキルというのは会話を円滑に進めたり友人関係を充実させるための技術で、多くの人にとっては当たり前かもしれません。しかし、所謂「コミュ障」の一種である(という自覚のある)自分からすると参考になる事はたくさんありました。

 例えば、「初対面の人とどう会話を広げたらよいか」という事に対する方法として、「オープンエンドな質問を投げて相手が話しやすいようにして、そこから自然に会話を広げる」と行った事が書いてあります。

 そのほかにも友人関係を深めるにはどういったことが必要なのだろうかといったことや、すれ違いの原因や仲直りのためにはどうしたらよいか等、いろいろと参考になることが多い本です。


 私はこの本を読んで少し安心感を得たような気がします。というのも、私から見ると「日常的な会話」というのはどうもつかみどころがないのに多くの人が自然に身に着けているように見えて、もう手の施しようが無いように思っていましたが、会話にもある程度有効な方法論があるとわかったからです[脚注5]

 一方で、もっと早く読んでいればあの時もっと良い方向に事が運んだかなと昔の事を思い出す事もあって、うれしさ半分悲しさ半分といった感じでした。


 タイトルの通り、大学生(特に1年生)が読みやすいようなトピックの選び方や並び方がされていますが、いつ読んでも学ぶことは多い本だと思います。会話やコミュニケーションに漠然と悩みがあるけど、書店に置いてある本は何か違うなと感じている方には特におすすめの一冊です。

 

[脚注4]:私からしてみればいわゆる「ロジカル」な会話は日常的なコミュニケーションで、それこそ日常の中で身に付くから本にしなくてもと思いますが、自分がそういう環境に居るだけです。


[脚注5]:最近友人に言われたりもしてハッとしたんですが、どうやら自分は「正解」があると安心する質みたいです。受験に向いてそう、知らんけど。

 

余談 これを書いての感想とか


 初めてこういうのを書いてみましたが、自分の思っていることを文章に起こすというのはなかなか難しくて、日頃何気なく読む文章も作るの大変なんだろうなあと思いました(小並感)。

 質問やコメントなどがあればツイッターなどで連絡いただければと思います。


文責:西村


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