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LEDについて

 冬の夜に出歩けば、イルミネーションを見かけることもあるでしょう。ふと見たときにサンタやトナカイが笑っていたり、その周りにブルーやホワイトの光がきらきらしたりしていると、冬なのに温かく感じることもあるのでは?……そんなことはないですね。さて今日は、LEDについてぼく(@yuletmk)がお話しいたします。


赤色LEDができるまで


 色覚とは波長の感じ方であって、半導体においては禁制帯幅(あとバンド―不純物準位間エネルギーとかも)が光の波長を決定します。半導体といえば真性半導体のシリコン、あの鏡みたいなペレット、が高校の教科書的には有名かもしれませんがここではⅢ―Ⅴ族化合物半導体を考えます。GaAsはその中でも作りやすく禁制帯幅が約1.3eV、波長にすると0.9umの化合物半導体です。赤色光が0.77umまでですから、この光は赤外光と言えます。赤外光LEDの用途としては、リモコン(テレビでも、エアコンでも)がなじみ深いかもしれません。赤外は目に感じられないので、照明用途のためにはもう少し波長が短い、つまり禁制帯幅が大きい化合物半導体が必要になります。そこで発明されたのがGa(1-x)Al(x)As/GaAsです。これはGaAs基板を結晶成長させる段階でガリウムを一部アルミニウムに置き換えることにより、波長を赤色光に「押し込んだ」物質です。これが赤色LEDの発明となり、その明るさ・消費電力の小ささから信号機やブレーキランプに使用されることになります。このⅢ族(Al, Ga, In)とV族(P, As, Sb)のなかで一部を置き換える手法は、光ファイバー通信に用いるための発光素子In(1-x)Ga(x)As(y)P(1-y)/InP(当時用いられていた伝送路では、1.5umの光が波長分散(伝送に伴う損失)を最小にすることが分かっていた)を得るためにも活躍しました。


青色LEDができるまで

 

 Ⅲ族窒化物は、これまでの話から考えれば大変魅力的な化合物です。なぜならAlN, GaN, InNのバンドギャップは赤外から紫外に渡って位置しており、Ⅲ族を一部置き換えることで任意の可視光領域の波長を作り出すことができそうだからです。しかし、結晶成長させられるだけ格子定数の小さな基板(しかもGaNの格子定数に一致するような基板)がそもそもないこと、そしてNとGa, Inでは原子の大きさに違いがありすぎて綺麗な結晶を成長させられないこと、等の課題から、青や紫外のLEDの研究は当時の企業はもちろんアカデミックな研究者からもあまり人気が無かったそうです。

 そんな中、日亜科学という徳島県の蛍光塗料メーカが将来蛍光灯に替わる照明としてLEDに目をつけました。そのとき世界の照明の多くが蛍光灯だったこともあり日亜の経営はかなり安定していたそうですが、将来の商売敵を研究させるところに時代の先見性を感じます。このような経緯から、白色LEDをつくるのに必要不可欠な青色LEDの研究を会社から任された人物こそがノーベル物理学賞を受賞したあの中村修二氏でした。ニュース等でご存じの方も多いと思いますが、当時常識はずれとも言われたサファイア基板上に窒化ガリウムを成長させる手法で、結晶欠陥が半導体の強度を高めるなどの発見があり、あらゆる波長の光を非常に高い効率で作り出す技術につながりました。


おわりに


 小さなLEDの中に、様々なドラマが詰まっていることが分かりましたね。この話にはまだ続きがあって、日亜は青色LEDが実現するとすぐに自社の赤と緑の蛍光体を混ぜ込み白色LEDを売り出し、世界的な企業に成長しました。この方式の白色LEDはいまも現役で使用されています。家庭用照明において蛍光灯はLEDに駆逐されかけていますが、実はLEDの中にも蛍光体は生きているのですね。

 これで記事はおしまいにしたいと思います。皆様よいクリスマスをお過ごしください。ごきげんよう。


文責:ゆ

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