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ISO 3103について

更新日:2020年12月5日

どうも、4年のかつのです。

紅茶同好会KUREHA Advent Calendar 2020の2日目にして、早くも前日夜に記事を書き始めるという失態を犯しておりますが、何卒温かい目でのご高覧を宜しくお願い致します。


1. 標準規格って何ですか?


 今回題材にするのは「ISO 3103」です。みなさん、「ISO ~~ 認証」という文字列をいろいろな製品の広告や工場の看板などで見かけたことはないでしょうか?実は「ISO」とはInternational Organization for Standardization、国際標準化機構の略であり、ここが作成しているのが「ISO ~~」と称される標準工業規格です。標準規格は主に工業製品のより効率的な流通、消費のために製品の大きさや重さ、形状や材質、色や表示、用語などを各企業や標準化団体が規格として定め、各社はそれに基づいて製品を製造するという工業生産の方式です。この標準規格によって、普段私たちはレンタカーでどの車種を借りようが運転できますし、どのメーカーの缶ビールであっても同じように冷蔵庫に積み上げ、プルタブを開けて飲むことができるようになっています。このようなISO規格は現在ネジのネジ距離を定めたISO 724(いわゆるM~ネジというやつですね)から鉄道車両の構造材料の基準、ココア豆の切断試験の方法に至るまで10,000種類以上がありますが、今回題材にする「ISO 3103」は「(紅)茶の淹れ方」を定めた標準規格です。


2. ISO 3103は『正しい』紅茶の淹れ方なんですか?


 ISO 3103は1980年に英国規格協会が定めたBS 6008:1980を基にして、第34技術委員会(食品工業)の第8副委員会(茶)で定められました。ISO 3103はWikipedia先生によりますと、


 

 この方法では、陶磁器または土器のポットの中で湯によって茶葉の可溶性成分を抽出すること、その液体を陶磁器または土器の白いカップに注ぐこと、注がれた茶葉の状態を調べること、そうして作られたミルクを入れた、もしくは入れていない液体について規定している。


・ポットは白の陶磁器か釉薬を塗った土器とする。またポットの内側に緩くはまる蓋がなければならない。

・大きなポットを使う場合は、容量は310 ml (±8 ml) 以下で重量は200 g (±10 g)でなければならない。

・小さなポットを使う場合は、容量は150 ml (±4 ml) 以下で重量は118 g (±10 g)でなければならない。

・湯100 mlあたり、2 g(許容誤差±2%)の茶葉をポットに入れる。

・湯はポットの縁から4~6 mmのところまで注ぐ。

・硬水は使ってはならない。

・茶葉の抽出時間は6分間である。

・抽出された溶液は、白の陶磁器か釉薬を塗ったカップに注ぐ。

・大きなカップを使う場合は、容量は380 mlで重量は200 g (±20 g)とする。

・小さなカップを使う場合は、容量は200 mlで重量は105 g (±20 g)とする。

・ミルクを含む試験体の場合は、茶を注ぐ前または後に入れる。

・茶の温度が65~80 ℃である場合、ミルクは茶を注いだ後に入れるのが望ましい。

・大きなカップには5 ml、小さなカップには2.5 mlのミルクを入れる。

 

となっているそうです。原文が読みたい方は https://www.iso.org/standard/73224.htmlより、58スイス・フラン(約6,700円)で原文をPDFで購入できます。なんでお金取るんでしょうね。ちなみに、上に示したWikiのコピペ概略は、1980年当時の内容であると推測されますので、2019年に改訂された現在の版の内容を知りたい方は是非上記サイトからファイルをご購入ください。


 雑学的なことを述べますと、まずこの規格はあまりに『英国らしく馬鹿らしい』として1999年のイグノーベル賞を受賞しています。また、ISO規格には茶に関する規定がこれ以外にも「茶の化学組成分析の方法(ISO 1573, 1575, 1587など)」、「インスタント茶に関する材料力学的分析の方法(ISO 6770)」、「烏龍茶の定義(ISO 20716、界隈次第では戦争が起きそう…)」、「抹茶について(ISO 21380)」など20種類以上あります。


 さて実際、この茶の淹れ方は正しいのでしょうか。私が見る限りもっとも気になるのは、『茶葉の抽出時間は6分間である。』という点です。まあそのほかにもいろいろありますが。経験上、紅茶の抽出時間(=蒸らし時間)を6分も取るのはOP(オレンジペコ、紅茶のグレードの一でありかなり大きな茶葉を指す)を淹れるときだという風に解釈しています(異論は認めるので、怒らないでください)。一方、CTCなどといった細かな茶葉を6分も蒸らしてしまうと渋みが強く出るように感じます(異論は認めるので…すいません)。


 ただし、この標準規格は普段の生活における紅茶を淹れる適切な方法を示すのではなく、収穫期ごとの茶葉検査などの科学的な試験に供する際の茶の調整法を定めているそうですので、おそらく長く蒸らして茶葉の特徴を強く出すようにしているんでしょうね。なるほど。


3. 実際に淹れてみた

 

 というわけでISO 3103にのっとって紅茶を入れて飲んでみました。使用茶葉はロンネフェルトのイングリッシュブレックファースト(Amazon、ティーバックしかなかったです : https://www.amazon.co.jp/dp/B00NMJN508/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_AuMXFb2Z351CV )ですが、これおいしいのでお勧めです。感想としては、やはり抽出時間の長さが直に効いているように感じました。いつもは3分程度蒸らしているのですが、6分という抽出時間は水色はそれほど変わらないもののかなりのコクとそれに伴う苦みと渋みを引き出していまいした。


4. だからどうした


 これまでISO 3103に関して話してきましたが、今回これを記事の題材に選んだのは工学部生である私が紅茶に対してこのような国際的な標準規格が定められていることを知った時に最初に思ったのが、「紅茶もやはり産業製品なのだ」ということだったからです。紅茶は18世紀以降列強諸国の植民地支配におけるプランテーションと密接にかかわって中国からインド、スリランカにおける大量生産と欧州における大量消費の構図が確立されています。こういった背景があるからこそ茶はこれに対して国際的な標準規格が多く定められ、国際的に工業製品のように広く流通されているように思います。私は紅茶は農業生産品であると同時に高度な工業製品ではないだろうかと考えています。その一端を標準規格という観点から再考していただけたなら幸いです。


 長くなりましたが、紅茶同好会KUREHA Advent Calendar 2020の12月2日、私の担当回の記事は以上となります。この後も23日間、それぞれの会員が紅茶について、または紅茶に全く関係ないことについて、熱く、またはそれほど熱くなく語る予定ですので、私の記事を見て懲りることなく明日以降もぜひご覧いただきたいと思います。それではみなさま、良いクリスマス、お年をお迎えください。




写真1:いつもの淹れ方での一例、添えてあるアップルパイはDEAN & DELUCAのアップルパイです。パイサクサクでりんご甘すぎず美味しいですよ、高い(1ホール2,700円)けど。



写真2:ISO 3103にのっとった淹れ方での一例、水色はあまり変わらないように見えますね



文責:かつの

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