聖路加国際大学2年の星野と申します。紅茶に関連して、スリランカのことを書いてみようと思います。現地の人に「学校でひろめてね!」と言われたので、伝統的な煎じ薬を紹介してみます。関係ないですが、スリランカのおばあちゃんに突然、「ヘタってんな!」と言われてびっくりしたら、シンハラ語で「明日もうちに来る?」という意味でした。
スリランカと言えば「セイロンティー」でなじみ深いインド洋の島国ですが、訪れる人の身体の不調が自然と整ってしまう国でもあるようです。庄野(2013)はポヤデー(満月の日で、スリランカでは祝日になる)に表されるような、月に対応した時間感覚である「スリランカ時間」とアーユルベーダとの考察を通して、スリランカを訪れた人の身体の調子が整う現象を紐解いています。
そんなスリランカには、パスパングワと呼ばれる煎じ薬があって、スーパーや商店などでたくさん売られています。風邪薬だと現地の人は言っていましたが、実際に購入したものにはインフルエンザまでにも効用があると書かれています。効用の真偽はさておき、現地の人達にはかなり信頼されているらしく、COVID19の流行に際してはスリランカ国内で入手困難になるほどでした。
パスパングワとは、「五種類」という意味で、製品によって異なりますが、定番の原料はコリアンダーシード、生姜、パスパダガム、ヴェニヴェルガタなどらしいです。(名前を挙げたけど、「へ―あれなんだ」となるはずがない。)これらを水洗いしたのち、浸した水が半分くらいの量になるまで煮詰めて飲みます。
(パスパングワを煮ています。)
(電車の写真って需要がありそうかなと思い…インド洋すれすれに線路が通っています。)
薬らしいというか、苦いのか、辛いのか、渋いのか、実は味ないのか?みたいな味がします。もちろん子どもは飲みたがりません。「体にいいから、飲みなさい」と口酸っぱく言う、母子のやり取りが生まれる味でもあります。「ハクル」という素朴な砂糖菓子をちびちびかじりながら飲むのが定番でした。熱いパスパングワとハクルの甘みを交互に少しずつ口に含んで、ゆっくり時間が経つうちにおいしい気がしてきますが気のせいです。そのゆっくりと過ぎる時間に妙味があるのだと思います。
服用量について、現地の人に「いくら飲んでもいい」「飲めば飲むほど良い」と言われたので、真に受けて1日600ml飲んでいたら、車酔いのような倦怠感に1週間ほど苦しみました。パスパングワがなんらかの影響を生体に与えるのだということを表わしているのかもしれません。後に英語表記のあるものを買ってみたら、推奨されている服用量の倍飲んでいたようです。薬物乱用です。
スリランカで生産される茶葉は良質なものから海外に輸出され、国内に良い茶葉は残らないといわれます。しかし現地のお母さんは劇的においしい紅茶を淹れるし、校庭で牛を放牧するおじさんがいたり、土手でクリケットをしている人の傍らで立派な孔雀がケンカをしていたりとおもしろい国です。ぜひ旅の目的地にスリランカを、感冒症状にパスパングワを。
(参考文献)
・庄野護『スリランカ学の冒険』、大阪:南船北馬舎、2013年
・H.K.S. De Zoysa, Herath P.N.H., Cooper R., Waisundara V.W. “Paspanguwa Herbal Formula, a Traditional Medicine of Sri Lanka: A C
文責:Fumika Hoshino
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