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紅茶から始まる英語史小話

ご挨拶

 皆様こんにちは。紅茶同好会KUREHAのAdvent Calendar 2021で12/3を担当いたします修士課程1年の河口祐希と申します。

 一昨日のもうりさんの記事は非常に興味深かったですね。皆様はご覧になりましたでしょうか?「紅茶好きあるある」について私の解答は記事の末尾に載せておきます。

 さて、今回の記事に入りましょう。私の専攻は天文学ですが、今日は私の趣味の一つである英語史について雑談をしていこうかと思います。特に目的はなく、思いついたことを書き連ねておりますので、気楽に読んでいただければと思います。

 


第一幕

 現在、英語は英国・米国等で話されておりますが、ここでは英語がどのような言語であるかを紹介します。これは英語史を語る上での基礎となります。

 日本語の古文と現代文を思い浮かべていただければわかりますが、言語というのは時間によって変化していくものです。英語も同様に、


印欧祖語 > ゲルマン祖語 > 古英語 > 中英語 > 近代英語 > 現代英語


というように時代によって変化してきました。


古英語・中英語・現代英語の「主の祈り」。全然違いますね。出典はこちら


 言語にはグループ(系統)がありますが、言語のグループは「どの言語から分岐・派生したか」という起源に基づくグループ分けをすることが多いです。家系図のようなものだと思っていただければと思います。

 例えば、英語やドイツ語はゲルマン祖語という言語から派生してきました。ゲルマン祖語から派生した言語グループを「ゲルマン語」と呼びます。このことから、英語やドイツ語はゲルマン語であると言えます。また、(俗)ラテン語に起源をもつ言語グループは「ロマンス語」と呼びます。ロマンス語にはイタリア語やフランス語が含まれます。

 そして、ゲルマン祖語もラテン語もさかのぼると印欧祖語(インド・ヨーロッパ祖語)という言語に基づくとされています。印欧祖語から派生した言語グループを「印欧語(インド・ヨーロッパ語)」と呼びます。英語もドイツ語もイタリア語もフランス語も印欧語です。印欧語はヨーロッパからインドまでユーラシア大陸の広範囲に分布する言語グループです。


 以上で、英語は印欧語ひいてはゲルマン語である事を紹介しました。次節以降では具体的な英語史にまつわる話をしていこうかと思っております。



第二幕

 巷ではafternoon teaが流行っているそうです。コロナ禍で酒類が制限された影響でしょうか。afternoon teaは英国発祥の文化ですが、現代では世界中で地域独自の文化を取り入れながら楽しまれています。私も国内国外で様々なafternoon teaを楽しんできました。


英国でのafternoon teaの写真。英語史には何の関係もありません。


 さて、afternoonという英単語ですがこれは簡単に‘after’ 「後に」+ ‘noon’「正午」 という二単語に分解することが出来ます(以降、分解する時は斜字にて表記します)。ではここで、afterとnoonという2単語について話を掘り下げていきましょう。


 afterは「後に」などの意味を持つという形容詞ですが、この単語はどのように形成されてきたのでしょう。”-er” という形をみると、‘aft’ + ‘er’ という語源で、upper (=‘up’ + ‘er’)やlower (=‘low’ + ‘er’)と同様にもしかして比較級 -er に由来するのでは?と思った方がいらっしゃるかもしれません。しかし、そう簡単ではありません。実はこの単語は語源としては ‘af’ + ‘ter’ という形に分解されます。前者の‘af’は現代のof、ひいてはoff に相当し、「離れる」というイメージを持つ意味です。‘ter’ の方は強調の形容詞を作る部分に相当します。例えばラテン語ではdexter「(左の反対という意味を強調した)右」などといったように他の印欧語には残っているのですが、英語ではあまり残っていません。まとめるとafterは ‘af’ + ‘ter’ は「(強調されて)離れた」という意味になり、現在の意味になりました。

 一方で、興味深いことに‘aft’ + ‘er’ という切り取り方は間違いとは言えない事実があります。fore and aft「船の前から後ろまで、船全体」という航海用語があるらしいのですが、afterに関してaftという切り取り方をしています。つまりネイティブも‘aft’ + ‘er’ という切り取り方をするという事がわかります。このように語源とは異なる分解をすることを「異分析」と言います。英語で有名なものでは、nicknameという単語があります。この単語は元々冠詞含めて ‘an’ + ‘ick’ + ‘name’ だったものを‘a’ + ‘nick’ + ‘name’と異分析された形が定着したという過去があります。


 次はnoonです。noonは元々「日出から数えて第9時(=現代の15時)」という意味でしたが礼拝の時間が15時から正午にかわったのでnoonは「正午」を示すようになった、という事くらいしか話すことがないなと思っていました。

 ところが、辞書を眺めていたところnoonの派生語にはnoontide (=‘noon’ + ‘tide’)「正午」とnoontime (=‘noon’ + ‘time’)「真昼」という派生語があるという事を見つけました。timeだけでなくtideという「時間」を示す古い形があるのは大変興味深いです。tideは現代では「潮の満ち引き」を表しますが、かつてはtimeと同様に「時間」を表す単語でした。Time and tide wait for no man「歳月人を待たず」ということわざはtimeとtideを韻を踏みながら「時間」という言葉を重ねて強調しています。

 ゲルマン語では「時間」を表す単語としてtide系列を使う言語(例えばドイツ語のZeit)とtime系列(例えば英語のtime)を使う言語の二系統があるのも興味深いです。


続く……?

 afternoonだけで書きすぎてしまいました。書こうと思っていたことの1/3くらいしか書けておらず口惜しいですが、今回はここで締めさせていただきます。私は12/23にも記事を書きますが、要望があれば今回の続きを書くかもしれません。


 2021年も残り少ないですが、頑張りましょう。それではまた。


文責:河口祐希


おまけ

毛利さんの記事に対する私の解答です。まあまあ当てはまるようですね。


あるある1:紅茶が一番好きなの?という質問に即答できない

>私はキームンと答えます。ダージリン含む世界三大紅茶の話をすれば引かれることはないようです。

あるある2:紅茶屋の新商品が欲しくなる

>確かにありますね。試飲などをして厳選しています。

あるある3:ストレスフルな時に茶葉を爆買いするも飲むのは後回し

>あまりないですね……。茶葉を買うのは気が向いた時ですね。

あるある4:高い茶器は欲しいものの購入に至らない。

>確かに私は普段使いでは500円の茶器を使っていますが、来客用&観賞用にブランド品を持っています。ロシアのImperial PorcelainのCobalt netを現地価格(日本価格の1/3以下!)で購入しました。

あるある5:紅茶にある程度まで満足したら、中国茶や日本茶に手を出し始める

>そうですね。中国茶や日本茶もチャノキから出来ているのですから当然です。




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