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クリスマスイブは、バイトでした

1,ご挨拶

 「皆様がこれを読んでいるときには、きっと私はバイト中でしょう」

 皆様いかがお過ごしでしょうか。3年の柳生です。前置きはさておき、本郷の銀杏並木で写真をとっている皆さん、帰ったら絶対に手を洗いましょう。風邪をひきます(脈絡がない)。今年も早いものでクリスマスイブですが、この一週間後には大晦日です。すごいペースでお金がかかります。あとは皆まで言うまい(早すぎる伏線回収)。冷え込みも厳しくなるこの季節、紅茶を片手に読書をするのはいかがでしょうか(こじつけ)。今回は、とても珍しい趣向の三冊の本を紹介させていただきます。


2,そうだ、奇書を読もう

 皆様は日本三大奇書をご存知でしょうか。日本三大奇書とは、『ドグラ・マグラ』、『黒死館殺人事件』、『虚無への供物』のことを指します(ここに、『匣の中の失落』を加え、日本四大奇書と称することがある)。どの本もミステリーに分類されますが、同時にミステリーものの「お約束」を破るというアンチ・ミステリーの要素も兼ね備えています。三冊に共通する特徴を挙げると、探偵(役)があまり役に立たない、推理が連想ゲームと化す、予期せぬ急展開などがあります。一方で、三大奇書と言っても中身や、趣向は三者三様であって、それぞれの本が独特の魅力を持っています。以下、三冊を読了した感想や本の特徴を書いていきたいと思います。


3,『ドグラ・マグラ』~読了すると気が狂ってしまう?~

 私は正気です。

 この本の中では、記憶を失い、精神病棟に入った青年が、記憶を取り戻そうとする過程で、大学教授同士の暗闘に巻き込まれていきます。主人公の主治医的ポジションの教授の論文や、千年くらい前の中国における伝承、死んだはずなのに主人公と同じ病院にいる少女などの不可解な出来事が交錯し、主人公がどのような人間なのか、主人公は本当に人を殺してしまったのか、という謎は混沌を極めていきます。この本の中で特徴的なのは、100ページ以上にわたる「キチガイ地獄外道祭文」です。何を意味しているのか、なぜこの部分に挿入される必要があったのか、この本の中でも特に訳のわからない箇所となっております。本を読み進めるにつれ、逆に謎が深まっていき、最後まで解決することがない、山奥に迷い込むかのような感覚を味わいたい人はぜひ読んでみてください。


評価(5段階,数字が大きいほど高い)

情報量 3 奇妙さ5 奇書らしさ5


読んでもわけがわからないのが普通だと思います。気が狂うことはないので一度読んでみてください。



4,黒死館殺人事件 ~探偵が役に立たない~

 『黒死館殺人事件』は、奇書の中でも最も難しい本と言われます。その難しさは、圧倒的な情報量の多さにあります。中世ヨーロッパの建築様式から、中国古典、星の運行などの雑多な知識をもとに、起こった殺人事件に対して、これでもかとばかりに空想的推理を披瀝する探偵法水ですが、ことごとく疑った人物が死んでいってしまいます。法水の推理は、瞬間瞬間においてはあっと言わせるような華麗さを誇りますが、現実においては、最終局面まで役に立たず、事件解決時には、死体と死産の推理があたりに転がる様相を呈します。探偵が役に立たないことにより、逆説的に黒死館の全貌がだんだんと明らかになり、そこに散りばめられた様々な仕掛けに魅了されていく、そんな作品です。本書の特徴から、ある程度世界史的な教養があると読みやすいと思います。オカルトマニアには特におすすめ。


評価

情報量 5 奇妙さ 4 奇書らしさ5


もはや教養書。結果ではなく過程に意味があるということなのでしょう。


5,虚無への供物 ~アンチ・ミステリーへの入口~

 この本は、他の二冊の奇書とは趣向が違い、普通の推理小説の感覚で読めます。ただ、アンチ・ミステリーとしての性格は一番強く、ミステリーもののお約束に対する直接的な言及、そしてそれに対する挑戦的態度を登場人物が取るというメタ要素もふんだんに入っています。肝心の殺人事件においては、複数の登場人物が推理を行いますが、殺人現場の個々の状況が犯人の仕掛けたトリックなのか、そうでないのかで議論は紛糾します。『黒死館殺人事件』と同じく、なすすべもなく殺人事件は遂行されていきますが、最終的には、犯人を突き止め、犯人の自白によってこれまで起こった状況の整合的な解説、つまり伏線回収が行われていきます。その点で、アンチ・ミステリーの性格を強く持つ本書ですが、通常の推理小説としても楽しめる作品となっています。他二冊と異なり、極端に難しい表現や、意味のわからない記述が存在するわけではないので、奇書の中では読みやすいと思います。


評価

情報量 3 奇妙さ4 奇書らしさ4


奇書の中ではある意味入門向けかもしれない。アンチ・ミステリーを始めるなら。



6,終わりに

 いかがだったでしょうか。読んで字の如く、普通の小説に比べれば一癖も二癖もある本ですが、その分独特な経験をすることができると思います。紅茶のお茶請けとしても優れているので、ぜひ試してみてください(体力を使うので、茶菓子は用意しておいた方がいいと思います)。余談ですが、日本の奇書としては紹介した三冊が有名ですが、国内外問わず、奇書はまだ存在します(国内だと東京忍者とか、海外だとボイニッチ手稿とか)。極め付けは、ジェイムズ・ジョイスのフィネガンズウェイクで、言葉としての意味はわかるのだけれど、どういう物語なのかさえよくわからないという代物です(フィネガンズウェイクに比べれば、多分紹介した三冊は可愛いものだと思います)。このように探せばいくらでも面白い本は出てくるので、ぜひ興味を持った方は読んでみてください。未知の世界は、案外身近に転がっているのかもしれません。


追記

 執筆日程がクリスマスになりました。また、イブのバイトは先方の都合で急遽キャンセルとなりました()。こんなのって,,,


お断りとご案内

 一部不適切な表現がございますが、原作を説明するのに必要だと考え掲載させていただきました。ご了承ください。また、上記の本は、区立(市立)図書館を探せば、高い確率で置いてあるので、ぜひお試しください。

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