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磁器に関する科学

更新日:2023年12月11日

はじめに

みなさまこんにちは。KUREHA初代会長の博士課程1年の河口祐希です。今年も紅茶同好会KUREHAのAdvent Calnder 2023が開催されておりますが、楽しんでおりますか?今年は例年に比べて著者の独自色が出た記事が多いように感じます(いいことです!)。


私はこの企画が始まった2020年から毎年Advent Calendaerを寄稿しており、これまで5回も書いています(2020/12/1, 2020/12/25, 2021/12/3, 2021/12/23, 2022/12/3)。今年は忙しくどうしようか悩んでいたのですが、最近ご無沙汰となっている記事執筆のリハビリ機会として丁度良いだろうということで結局今年も書く運びとなりました。拙文かと思いますが、お付き合いいただければ幸いです。


今年の題材は、私が近日興味を持って調べている焼き物に関して簡単にお話しようとかと思います。特に紅茶同好会KUREHAにおいて茶器として興味をひいているであろう磁器について、科学的背景からその面白さを簡単にまとめてみようかと思います。


筆者のお気に入りの茶器(Imperial porcelain, Cobalt net)


磁器とは?

焼き物には土器、陶器、炻器、磁器とありますが、皆様は違いがわかりますでしょうか?国や文化によって陶磁器に関する定義は異なっておりますが、ここでは日本における分け方を採用します。日本において焼き物の種類は

  • 原料の土は何か

  • 釉薬をかけているか

  • 何度で焼いたか

などによって区別されます。その中で磁器は「岩石成分を含む粘土(磁土)を原料とし、釉薬をかけたのち高温(1300℃以上)で焼いた焼き物」です。


以降では、科学的視点から磁器の特徴について見ていきます!


大雑把な土器、陶器、炻器、磁器の区分


化学: なぜ磁器は透き通っていて硬いのか?

磁器の原料は岩石由来のケイ酸成分(カオリン・珪石・長石)を多く含んだ白色粘土です。これは磁土もしくは磁器土と呼ばれています。これを整形することで磁器の形を作ります。ケイ酸成分は1300℃を超えるとガラス化するので、これにより磁器は金属のように硬くなります。しかしながら粘土のみで焼成すると、表面が粗く吸水性も高くない焼き物が出来上がってしまいます。


そのような状態を避けるため、焼成する前に釉薬というものを整形した粘土の表面にかけます。釉薬は前述したケイ酸成分(カオリン・珪石・長石)を含んだ液体で、これにより表面をよりガラス化させることができます。この釉薬により磁器特有の表面の滑らかな質感や透き通った見た目になります。


粘土や釉薬はさらに細かく化学的な多様性があり、さまざまな発色や質感を表現できます。磁器の多様性はこの化学的成分に由来があると言え、地域によって異なっています。


地学: 磁器はどこで作られるのか?

磁器の多様性は地域によると言いましたが、どのような場所が適しているのでしょうか?磁器を作るにはケイ酸成分を多く含む岩石と高温で焼成できる釜が必要になります。


ケイ酸成分が含まれた岩石は地球上で何億〜何十億年もかけて作られています。より具体的には

  • 堆積:物が積もって岩になること

  • 風化:岩が削れて土になること

  • 変成:熱や圧力で化学変化すること

という作用があります。ケイ酸成分を多く含む岩石は、このような地学的作用が起きる限られた鉱山でのみ採ることが出来ます。また、高温で焼成するには、木材などの燃料を手に入れられる環境が必要です。つまり、運搬や冷却のための河川などが必要になります。


そのため、現代での磁器の名産地は必然的にケイ酸成分が含まれた岩石が採れる鉱山や運搬・冷却に必要な河川の近くとなっております。日本の伊万里、中国の景徳鎮、ドイツのマイセン、フランスのリモージュはいずれもこの条件を満たしていると言えます。”良い窯には良い土壌がある”ということで、磁器の文化的発展にはこのような地学的背景があるといえます。


広がる磁器の世界

このように、焼き物の世界には化学・地学といった科学的背景があると言えます。勿論その裏にはそれを活かす沢山の技術者が関わっており、人文学的背景も欠かすことが出来ません。その為、一つの地域・ブランド・製品でたくさん深掘りすることが出来ます。


この記事で皆様が広い磁器の世界に興味を持ってくだされば幸いです。


関連文献

・加納亜美子、玄馬絵美子(2022)『あたらしい洋食器の教科書』

・樋口わかな(2021)『やきものの科学』

・林上(2022)『焼き物世界の地理学』

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